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駅前の老舗店

　幸手駅前の肉屋といえば、ここを思い浮かべる人が多いはずです。肉屋と併設したこの井草食堂は、大衆的な雰囲気が漂う店として知られています。

　と言いながら、実は、これまで一度も入ったことがなかったんです。先日、ホテルグリーンコアの集まりに参加した折、説明役を務めていた井草さんと言う方が、「私の井草という名前を聞いて、何か思い浮かぶことはありませんか？」と言うんです。
　ン？いぐさ、イグサ、井草、そういえば駅前のあたりにそんな名前の店があったな～、なんて思っていたら、「そうです、駅前の井草食堂です」なんていうんです。「私はそこの息子なんです。生まれも育ちも幸手です。幸手から出たことがないんです。」なんて言うではありませんか。この方がホテルグリーンコアのマネージャーだったんですね。ほほ～、それなら一度訪ねてみるに如くはなし。ということで訪ねてみました。
　お昼時、お店の暖簾をくぐると、明るい店内には既に先客が２人。テーブル席にそれぞれ一人ずつ座っています。私は、入り口に近いテーブル席に座りました。

　さて、何を注文しようか、とメニュー表を見ます。ここは元々肉屋さんが開いた店です。やはり肉がらみが一番よかろうと判断しました。そこで、定番の「かつ丼７２０円也」を頼むことにしました。かつ丼って、結構単純ですが、昔から、味わい深い庶民の味なんです。

かつ丼の想いで

　かつ丼には思い出があります。その昔、高校を卒業し、東京に出て来ました。典型的なお上りさんです。上野駅で周囲をキョロキョロ見回し、「オ～、ここが東京か～！」なんて感激していたんです。そしたら、背広姿のおじさんが近づいてきて、何か変なものを見せるんです。そこには「警察手帳　警視庁」なんて文字が書いてありました。私服のお巡りさんだったんですね。そして「この辺りは危ないから注意しなさい」と言うんです。そうか～、自分は誰から見ても典型的な「お上りさん」に見えるんだ、と得心したものです。
　その頃に、大衆食堂というところに初めて入り、そこで食べたのが「かつ丼」だったんです。かつ丼との初めての出会いに、「世の中にはこんなにもうまい食べ物があるんだ～！」と大感激したものです。世の中がピカピカパチパチ、バラ色で素晴らしく見えたものです。

ちょっと硬かった

　さて、今日はその感激した思い出のあるかつ丼です。ほどなくかつ丼様のご到着です。もちろん、味噌汁とおしんこ付きです。写真でご覧の通り、余り垢抜けた感じはしませんが、大事なのは見た目よりも味です。

　まずカツをぱくりと食べてみました。ン？あまり柔らかくないな。この店の発祥が肉屋というにしては、と少し気落ちしました。それに玉ねぎなど甘辛く煮た具材のタレがご飯にあまりかかっていません。ご飯にも染み込んだタレの味が何とも言えないんですよね。最近、都内では「天丼　てん屋」という店が繁盛しています。その店では、わざわざタレだけをかけてくれます。ああいうのが美味しいんです。
　でも、まあいいか、値段は７２０円なんだし、値段からすればこの程度かもしれない、と一応納得しました。
　あとで別の人から、「井草食堂ではメンチ定食がお勧めですよ」と聞きました。そうだったか、こんどはメンチに挑戦してみることにしましょう。

出入口が２か所

　この食堂、出入口が２箇所あるんです。最初、中は別の店になっているのかしらと訝しみましたが、入ってみると全く同じ。どうして出入口が２箇所あるのか、理由が分かりません。多分、元々あったものなのでわざわざ潰す必要もない、ということなんでしょう。
　私はケチな人間なので、自分が経営するなら、横の入り口を閉じて、テーブルを一つ増やすだろうな、なんて思いましたが、これこそ余計はお世話というものでしょう。